レセプトオンライン化に対応したサービスの向上と業務効率化のための

レセプトオンライン化に対応したサービスの向上と業務効率化のための計画

平成19 年12 月
社会保険診療報酬支払基金

http://www.ssk.or.jp/osirase/pdf/osirase01.pdf

< はじめに>
 社会保険診療報酬支払基金( 以下「支払基金」という。)の使命は、社会保険診療報酬支払基金法( 以下「基金法」という。)により課された「中立公正な審査と迅速適正な支払」を的確に実施し、医療保険制度の安定的な運営を支えるという公共的役割を確実に果たしていくことにある。
 支払基金は、上記公共的使命の遂行に当たって、「特別の法律により設立される民間法人」として、その事務・事業を自立的かつ適正に行うこととされており、これまでも、自主的・自立的に業務の効率化・合理化を進めるとともに、審査の充実に重点を置きサービスの質の向上に努めてきたところである。
 支払基金としては、レセプト電子化・オンライン化の今後の進展を踏まえ、その果実を最大限に活用し、引き続き、事業の効率的かつ安定的な運営を確保しつつ、より一層の審査の充実に取り組んでいくこととしている。
 支払基金はこうした取り組みを着実に実施していくため、「規制改革推進のための3 か年計画」( 平成1 9 年6 月2 2 日閣議決定)の内容に即して、以下のとおり「レセプトオンライン化に対応したサービスの向上と業務効率化のための計画」を策定する。
 なお、この計画は、国が定めた「療養の給付、老人医療及び公費負担医療に関する費用の請求に関する省令」( 以下「請求省令」という。) の工程表のスケジュールに従ってオンライン化が進展することを前提としている。



1 基本的考え方

( 1 ) これまでの取組
○ 支払基金は、これまで医療機関から提出される膨大な紙レセプト( 診療報酬請求書) を各保険者に振り分けた上で請求を行い、各医療機関に診療報酬を支払う業務( 以下「請求支払業務」という。) に相当の労力を振り向けてこざるを得なかった。

○ このため、レセプトの審査については、審査委員・職員の努力にもかかわらず、レセプトの数があまりに膨大であることから、支払基金に課せられた適正な審査業務の遂行という観点から見て、充分な審査が成し得ているとは言えない現状にある。

○ 支払基金は、こうした状況を変えていくため、これまでレセプト電子化の普及に力を入れるとともに、将来におけるレセプト電子化の進展を見通して、請求支払業務の合理化を進めてきた。また、並行して業務の重点を徐々に審査へ移行させることとし、審査充実のための年次計画を策定することにより、審査レベルの向上に努めてきたところである。


( 2 ) 今後の取組方針
○ 今後の取組は、これまでの取組の方向を基本的に踏襲しつつ、レセプト処理の完全オンライン化を見据えた取組となる。

○ まず、原則完全オンライン化への工程を確固たるものにするため、所要のI T 投資を着実に行う。また、この工程が着実に進めば、請求支払業務の効率化に見合った要員効果が見込まれるため、引き続き、事業の安定的運営の確保に配慮しつつ、退職者補充を必要最小限とすることにより定員削減を継続していく。

○ 他方、レセプトの相当数が電子化されることに伴い、システム機能を最大限に活用しつつ、効率的審査に努めるとともに、請求支払業務から審査業務に所要の要員を投入することにより、レセプト審査を強化し、相当な審査成績の改善を目指す。

○ こうした過程を通じ、請求支払業務は、基本的に大きな人手をかけることなく、オンラインネットワークで処理していく一方、職員の行う業務のウエイトは、審査部門に重点化していくこととなる。

○ 上記の基本的考え方を基にした具体的な取組は、以下のとおりである。


医療機関・保険者を通じたオンライン基盤の着実な整備

○ 請求省令の工程表のスケジュールに即して、オンライン請求の義務化が進むことを前提に試算した電子レセプトの普及の見込みは、次のとおりである。

○ 支払基金は、請求省令の工程表のスケジュールを踏まえ、引き続き、レセプト電子化の先導役としての役割を果たしていく。

(支払基金は、オンライン請求の前提となるレセプト電算処理システムの普及促進のため、組織をあげて医療現場にきめ細かく足を運ぶなど、先導的役割を果たしてきた。例えば、平成18 年度は、医科・調剤をあわせて全国で328 回にわたり説明会等を開催し、延べ約22,000人が出席、このほか、病院等に個別訪問などを5,332 回実施している。)

また併せて、レセプトデータが医療機関・保険者を通じて一貫して電子的に処理され、かつ、オンラインでやり取りされる基盤の整備に着実に取り組む。
このためにハード・ソフトを含めたオンライン基盤に係る必要とされるI T 投資を計画的かつ着実に実施する。

? レセプト電算処理システム、オンライン用のサーバ増設
( 平成2 0 年度着手、平成2 1 年度完了)
※ レセプト電算処理システムの普及に伴うデータ量の大幅な増及び機能拡充に対応するためのサーバの増設

? インターネット回線を利用した医療機関からのレセプトオンラインネットワーク接続方式の拡大
( 稼働時期 平成2 0 年度当初目途)
厚生労働省において検討中の「レセプトオンライン請求に係るセキュリティガイドライン」の改正がなされた場合、この内容に即してインターネット回線による医療機関からのオンラインネットワーク接続方式の拡大を図る

? 電子レセプトの返戻システムの開発
( 開発着手 平成20 年度: 稼働時期 平成2 0 年度中)
医療機関へのレセプト返戻については、現在電子レセプトを紙出力した上で行っているが、これをオンライン基盤を活用し電子レセプトのままで行えるようにする

? レセプト電算処理歯科システムの開発
( 開発着手 平成19 年度: 稼働時期 平成2 0 年度中)
※ レセプト電算処理歯科システムは未構築であるため、システム構築を図る

? 被保険者の資格誤り等による返戻や再審査請求を電子化・オンライン化するためのシステム開発
( 開発着手 平成21 年度: 稼働時期 平成2 2 年度中)
※ 現在保険者は被保険者の資格誤り等による返戻や再審査請求をレセプト形態にかかわらず紙で行っているが、これをオンライン基盤を活用し電子レセプトで行えるようにする

? 完全オンライン化に備えたネットワークの増強
( 平成2 1 年度増強)
医療機関による支払基金へのオンライン請求の増加及び全保険者に対する支払基金からのオンライン請求に対応するため、ネットワーク回線を増強する


3 請求支払業務の合理化の取組

( 1 ) これまでの請求支払業務の合理化の取組

○ 紙媒体が中心の業務処理フローにおいては、審査業務に比べ、請求支払業務の比重が重くならざるを得ない。
 支払基金では、請求支払業務の合理化を目指し、紙レセプトを効率的に処理するため平成11 年度にレセプトO C R 処理システムの全国配置を完了するとともに、他方で、レセプト電算処理システムを全国的に整備し、電子媒体によるレセプトの受入体制を確立した。
 また、平成1 4 年度から全国の医療機関に対して、レセプト電算処理システムが普及拡大していくよう、組織をあげて積極的に働きかけてきた。

○ これと並行して、レセプト電子化が進展すれば生まれる合理化効果を先取りして、段階的に請求支払業務のアウトソーシングを進めるなど、業務の効率化に努め、レセプト電子化が本格的に開始された平成1 4 年度から19 年度にかけて既に合計約▲ 1, 00 0 人の職員定員を削減してきた。

(レセプトの保険者別分類作業、請求支払計算のためのデータ入力については、レセプト電子化を先取りして、すべてアウトソーシングを実施済である。)

○ また、保険者への請求についても、保険者事務の効率化に資するため、電子レセプトのみでなく紙レセプトについても、同一形態の電子データで保険者が受領できるよう、平成18 年度からレセプト電子データ提供事業の普及に努めているところである。


( 2 ) 今後の電子レセプトの普及に伴う請求支払業務の合理化

○ 現状においては、紙レセプトと電子レセプトが混在し、業務処理が輻輳し、未だ請求支払業務に相当の労力を要しているのが実態である。
 しかしながら、前記2 の電子レセプトの普及見込みを前提とすれば、現行において全レセプトのなお約6 割を占める紙レセプトが段階的に電子レセプトに移行することにより、電子レセプトへの移行を先取りしたこれまでの合理化効果に加えて、平成2 3 年度の原則完全オンライン化の段階では、相当程度の合理化効果が見込まれる。

○ また、現在アウトソーシングしている業務についても、この段階では基本的には、不要となる。

○ なお、この時点においても、国が定めた少数該当の医療機関等からの請求処理のほか、保険者・医療機関との間の返戻や再審査処理のやり取り、さらに生活保護等の公費実施機関との間のレセプトのやり取りについて、紙レセプトによる処理が一定程度残ることが見込まれる。
 残された紙レセプトの処理については、レセプト電子化・オンライン化に対する医療機関の今後の対応等を見極めつつ、支払基金が何らかの役割を担い得るかどうか検討する。

(「少数該当」とは、月間平均請求件数が医科・調剤で100 件以下、歯科で50 件以下の場合をいう。)


4 審査の効率化と質の向上

( 1 ) 審査のあり方
○ 審査委員会は、基金法の規定に基づき、三者構成による中立公正な審査体制が義務付けられている。

○ 審査委員会の審査は、医療機関が患者に対して行った保険診療を月単位で記載したレセプトに基づき行われているが、患者の病状・病態・特性は個々別々であり、これに応じて診療行為も様々なものとなることから、レセプトの内容も千差万別である。

○ 審査の基本は、医療機関の診療内容が、国が定めた療養担当規則、診療報酬点数表の規定やその解釈といった保険診療ルールに則って適正に行われているかどうかを、個々のレセプトを読み解いて医学的判断に基づき行うものである。

(医学的判断とは、個々のレセプトに即して、患者の病状、病態、特性を把握した上で、診療行為が国の定めた保険診療ルールから見て妥当であるかどうか、すなわち、薬剤の適応、用法・用量の妥当性、検査、処置、手術の必要性などを、医療機関の診療傾向も踏まえつつ、審査委員の臨床経験や専門的知識に基づき判断するもの。)

○ 審査は、紙レセプト・電子レセプトいずれであっても本質的に変わることはなく、例えば、レセプトに記された病名等に照らし、病状・病態を推し量ったうえで、診療内容が適切であるかどうか、診療内容が必要以上に過剰でないかどうかといった実質的審査は、コンピュータで代替できるものではない。


( 2 ) 審査の現状
○ 支払基金は、毎月、医療機関等から送られてきた膨大な数のレセプトを、期限( 月末) までに審査のうえ、医療費を所定の期日までに保険者に請求し、医療機関に確実に支払うことが求められている。

(医科・歯科レセプトが毎月約5 , 0 0 0 万件、このほか調剤レセプトが毎月約2 , 0 0 0 万件。月々の医療機関・薬局への診療報酬の支払額は約8 , 5 0 0 億円。)

○ しかしながら、審査については、投入し得る審査委員、職員の数、時間が限られており、現実にはレセプトの内容すべてを審査し尽くすことは不可能である。
 すなわち、原審査に見落としは避けられず、支払基金の原審査には、見落とし率がなお約2 0% 6 、請求1 , 00 0 件中に再審査請求が2 件程度ある。
 こうした現状から、支払基金が行った審査についても、保険者は支払基金から請求があった後に改めてレセプト点検を行い、問題があると考える点について、支払基金に再審査請求を行うという保険者負担を招いている。

(見落とし率 = 再審査査定点数 ÷ ( 原審査査定点数 + 再審査査定点数))

○ したがって、支払基金は、見落としを極力防止するため、1件のレセプトの点数の大きさ、医療機関ごとの診療傾向、これまでのレセプト処理実績などを勘案して、レセプトに軽重をつけた上で重点審査を行っているところである。


( 3 ) 今後の審査の取組

○ 今後、レセプト審査の質的向上を図っていくためには、第1に、実質的審査はコンピュータにより代替し得ないものの、レセプト電子化に伴うシステム機能を最大限に活かしていく必要がある。

? まず、レセプトの内容によっては、一定の条件を設定することにより、判断が一義的となる項目があり、これらについては、定型的処理が可能になるため、機械的処理の対象とする。

? 他方、機械的処理の対象となし得ない一般の多くのレセプトの実質的審査に当たっても、審査支援機能をシステムに組み込んでいくこととし、これを最大限に活用し、効率的な審査に努める。
 第2 に、臨床で忙しい審査委員にその能力を最大限に発揮してもらうためには、審査委員に対する職員の審査支援体制を拡充することが不可欠である。審査委員と職員の緊密な連携の下、審査委員の審査効率をできる限り高めるとともに、審査委員の指示のもとに、職員が審査事務を的確に処理していく体制を築いていかなければならない。


ア コンピュータシステムによる機械的処理の拡充

○ 点数計算の確認のような固定点数のチェックや、算定ルールのうち正否の判断が一義的に決まり得る明確なルール・チェックについては、コンピュータプログラムの拡充を図りながら原則完全オンライン化の段階ではすべてシステムで行うこととする。
 これにより、算定ルール上の誤りに係る見落としをほとんど無くす。

(「算定ルール」とは、診療報酬点数表の告示及び関係通知により、具体的かつ明確に定められた保険請求上のルールであり、正否が一義的に決まり得る明確なルールが大部分を占めるが、審査委員の医学的判断を要するルールも一部含まれている。)

(電子レセプトについては、支払基金はレセプトコンピュータ標準仕様( 厚生労働省において公表。メンテナンスは支払基金が実施。) に基づく約1 万4 千の算定ルールをチェックするほか、独自にルール・チェック項目を追加し自動査定を実施している。算定ルールに係る査定は、原審査査定のうち、点数ベースで約10 分の1 である。)

○ 算定ルールに係る再審査査定点数は、再審査査定点数全体の約5 分の1 を占めていることから、上記により、原則完全オンライン化の段階で、現行約20% の見落とし率のうち算定ルール分に相当する4% 程度を下げることとする。
 なお、算定ルールのチェックについては、これまで審査委員は直接タッチせず、主に職員が行ってきたところであるが、レセプト電子化の進展に応じて、職員はこれに費やしてきた時間を実質的な審査業務に投入することが可能となる。

○ レセプトの中には診療内容についてチェックの不要な「定型的レセプト」 が存在する。
 定型的レセプトは、もともと実質的審査を行う余地のないレセプトであり、これまでもほとんど審査時間をかけていないが、この種の電子レセプトについては、システム機能を活用し、瞬時に一括処理することとする。これにより、原則完全オンライン化の段階で電子レセプトの約2 0% が一括処理される。

(一括処理する定型的レセプトとは、「初診料または再診料と処方せん料のみ」、「小児科外来診療料のみ」、「在宅末期医療総合診療料のみ」といった種類の154 事例のレセプトである。)


イ 実質的審査の充実

機械的処理の対象となし得ない一般の多くのレセプトの審査に当たっても、レセプトオンライン化に伴い可能となるシステム機能の活用を最大限に図ることとし、実質的審査を強化する。
 そのため、コンピュータシステムによる審査支援機能の拡充・整備を図ることとし、現在、コンピュータシステムに登載している

(ア)点数表の解釈、医薬品の効能効果等の情報に加え、
(イ)レセプトを重点的に審査するため、特定項目に着目してレセプトを抽出する機能や、
(ウ)過去の審査事例を登載し、これに類似する内容を有するレセプトを抽出する機能、
(エ)条件設定に基づき疑義ある内容にマーキングを行い注意喚起する機能

など、所要のシステム開発・整備を行う。

 なお、上記機能開発に当たっては、実際の審査に当たる審査委員の意見を十分に踏まえ行う。

○ 他方、請求支払業務の効率化の進展に対応して、審査委員が審査に従事し得る日程を今以上に確保することは期待し得るとしても、審査委員のほとんどが臨床医としての仕事を抱えていることを考慮すると、その総従事時間につき相当の増加を得るには困難な点が多い。

○ したがって、全体の審査成績の向上を図るためには、審査委員が限られた時間内でポイントを絞った的確な審査を行い得るよう、予めレセプトの疑義のある箇所につき職員の手により適切に特定していくことが必須となる。

 このため、コンピュータシステムの整備に関わる職員を含め、審査業務に従事する職員の実質人数を増やすとともに、職員は、医学的知識及び保険診療ルールに関する知識の涵養に努める。
 また、審査委員と職員との連携を強化するとともに、職員が、担当するレセプトにつき、原審査から再審査まで一貫して責任を持つ体制を確立する。

○ 上記のコンピュータシステムによる審査支援機能の整備・活用及び職員による審査委員に対する支援体制の拡充により、職員段階で、出来るだけ多くのレセプトを綿密に点検し、適切な疑義事項の指摘を増やし、審査委員の審査効率を高める。
 併せて、審査委員会の指示に基づき、職員段階でより多くのレセプトを適切に処理できるようにする。


( 4 ) 審査の充実目標
○ 審査充実の数値目標として、原審査の充実の指標となる「見落とし率」につき、平成1 8 年度に比べ原則完全オンライン化となる平成23 年度には、半減することを目指す。
( 平成1 8 年度 見落とし率 約20% → 平成2 3 年度 約1 0% )

○ 審査を充実し、見落としの減少につなげていくことは、支払基金の本来の使命であり、そのための取組の強化は、保険者の点検コストの縮減や、更には適正な保険診療の確保につながるものである。

○ また併せて、保険診療ルールの徹底を図っていくという観点から、医療機関に対する訪問懇談、面接懇談の実施や適正なレセプト請求のための照会対応についても、一層の努力を傾注する。


5 審査支払関連サービスの充実と新たな審査サービスの提供

( 1 ) 医療機関・保険者によるレセプト請求・支払事務の負担軽減のためのサービス

? レセプトオンライン請求にあわせて支払基金が導入した「事務点検A S P サービス」については、これに係るチェックロジックを公開することにより、医療機関が自ら請求前に記録条件の不備等請求誤りを発見し、正しい請求を行い得る環境を整備する。
( 平成2 0 年度実施)

? オンラインでレセプトの送受信が可能な保険者については、支払基金が電子レセプトに記載された資格データをもとに、速やかに保険者に資格照会することにより、被保険者資格誤りによる保険者からの返戻及びこれを受けて行われる医療機関からの再請求といった事務処理サイクルを短縮する。
( 平成2 2 年度以降、オンラインで送受信が可能となる保険者の拡大に伴い、順次拡充)

(現在、被保険者資格誤りの処理は、保険者が受領したレセプトのうち、資格誤りのあるレセプトを支払基金を通じて医療機関に返戻し、これを受けて医療機関が被保険者資格を再調査した上で、改めて再請求をしており、平成18 年度で年間約512 万件発生。)


( 2 ) 新たな審査サービスの提供

○ 支払基金は、現在、請求媒体が紙であれ電子であれ、その月々に請求される医科・歯科レセプトを1 件毎に審査すること( 単月審査) を基本として、業務を行っている。
 このため、基金の単月審査段階では、

(ア)院外処方に基づく調剤レセプトと医科・歯科レセプトの突合、
(イ)保険者が保管することとなる過去のレセプト原本の縦覧

は行っていない。

○ 上記の理由により、
? 医科・歯科レセプトと突合した調剤レセプトの審査 及び
? 複数月にわたるレセプトを通覧した縦覧審査

については、別途保険者において点検を行った上で、疑義のあるレセプトを特定し、改めて支払基金に審査請求を行っている。

(調剤審査の請求対象は、1,500 点以上の調剤レセプトであり、査定に至った件数は平成18 年度で約60 万件。調剤レセプト情報から処方せんを発行した医療機関の特定を図る必要があることから、調剤レセプトへの医療機関コードの記載が望まれる。)

(縦覧審査の結果、査定に至った件数は平成18 年度で約80 万件。)

○ ほぼ全ての医療機関・薬局のレセプトがオンラインで請求されるようになれば、上記突合や縦覧といったコンピュータ処理が技術的には可能となり、基金の審査において、こうした技術を活用した新たな審査サービスの提供が可能となる。
 このため、原則完全オンライン化の段階で、以下の審査サービスを新たに実施していくことができるよう、その体制整備を行う。

? 医科・歯科レセプトと突合した調剤レセプトの審査( 突合審査)
( 平成2 3 年度以降実施)
? 複数月にわたるレセプトを通覧した縦覧審査
( 平成2 3 年度以降実施)


6 オンラインネットワークを活用した新たなサービスの展開

○ レセプトオンライン化により、医療機関・保険者双方が安全性の確保されたネットワーク環境のもとで接続され、電子認証基盤も整備されることとなる。
 これにより、レセプトデータのみのやり取りにとどまらず、このネットワークを活用して、医療機関相互、保険者と支払基金との間で大量の医療関連データの交換が可能となる。
 このため、医療関係者のニーズ等を見極めながら、新たに、以下のサービスを提供する方向で検討を進める。

? 医療機関間の診療情報の外部交換基盤の提供
? 保険者から被保険者資格データの提供を受けて、被保険者に対する医療費通知等の保険者業務の代行

(レセプトオンラインネットワークを活用して、電子認証を受けた医療機関は、例えば、紹介状等を相互に交換することが可能となる。)

社会保障カード(仮称)の導入について、国において検討がなされているところであるが、ネットワーク処理を可能とするカードが導入される場合には、医療機関が保険者に対し、即時に資格を照会で
きるよう、支払基金のオンラインネットワーク基盤を提供することにつき今後検討する。


7 業務フローの見直しと定員削減等

○ レセプト電子化・オンライン化は、段階的に進んでいくものであり、業務フローについても、その見直しを漸次行う。

○ 支払基金は、これまでも紙レセプトから電子レセプトへの移行を見通しつつ、前述のとおり、一方で請求支払業務の合理化を図るとともに、他方で3 次にわたる審査充実のための3 ヵ年計画を実行に
移し、業務に取り組んできた。

○ 今後を見通すと、平成2 3 年度の原則完全オンライン化の段階では、これまでの約▲ 1, 000 人の定員削減に加え、約▲ 800 人の要員効果が見込まれる。( このほか、システム運用を含む共通管理部門の職員についても今後、約▲ 100 人の要員効果を見込む。)

○ 上記要員効果( ▲ 900 人)のうち、▲ 400 人については、脆弱な審査体制を充実するため、平成23 年度段階で審査の充実のために約200 人、新たな審査サービスを提供していくために約200 人をそれぞれ振り向ける。
(審査充実のため、1 支部当たり平均約4 人程度の投入を意味する。)

○ ▲ 50 0 人については、事業の安定的運営の確保に配慮しつつ、退職者の補充を必要最小限とすることにより、平成2 3 年度までに定員を削減して対応することとする。
 これにより、レセプト電子化が本格的に開始された平成1 4 年度から平成2 3 年度までで、定員削減数は累計約1, 50 0 人( 定員の1 / 4程度) となる。

○ 以上の過程を経て、支払基金の職員が従事する業務の重点を、審査業務に大きく移行させることとなる。

○ また、平成2 3 年度の段階では、審査充実に必要な期間を十分確保するという前提の下に、保険者への請求を現在の請求月の翌月10 日から数日間早期化することが可能と見込まれる。

(この場合、医療機関への診療報酬の支払期日を早期化しようとするには、全保険者がこれに見合って診療報酬を早期に払い込むことが前提条件となる。)


8 その他

○ この計画に基づき、規制改革推進のための3 か年計画に即して、今後、本年度末までに手数料適正化の数値目標を明示する。